城南の舎
建築MAP九州/沖縄(TOTO出版)2008.4/Reetec-21/mocos 2002.2/一個人 2001.4/建築ジャーナル2022.8/第6回熊本アートポリス推進選奨
▪️所在地/下益城郡城南町
▪️主要用途/専用住宅
▪️構造・工法/木造
▪️規模/地上2階 敷地面積 656.1㎡ 建築面積 103.3㎡ 延べ床面積 165.8㎡
▪️第6回くまもとアートポリス推進賞選奨


 城南町は熊本市南部に位置し、近年ベットタウンとして住宅建設が目立ち始めているものの、まだまだ自然豊かな土地である。敷地東にも以前ため池であった窪地が大きく広がり、その周辺には雑木が茂っている。その中でも目を引くのが、東南の角にある2本のムクの木であった。100年は経っていると思われるこの大木は、多少オープン過ぎる敷地を程良く閉じて、夏場には心地よい木陰を提供していた。比較的恵まれた広さの敷地のため、建物配置は自由に想定することが可能であったが、計画の早い段階で、この大木に正対する位置に自然と収斂していった。.
平面構成は、ローコストの要求から、単純矩形の2階建てとした。1階は土間と板間を中心とした大きな共用の空間で、その東南のコーナー部分には2層吹き抜けの大きな開口を設け、大木の垂直方向へ伸びる野太い流れを室内に取り込んでいる。2階は三つの居室から構成されているが、将来の住まい方の変化に対応できるよう、性格付けを避けた、曖昧な位置づけとした。一定以上の広さを確保した各居室には、複数の入り口を設けており、備え付けの大型の移動家具によって、簡単に分割することが可能となっている。それに対して1、2階を貫いて、建物中央に配置した白いボックスは、樹木の幹のような、変化成長のためのよりどころとして位置づけた。
内部の可変性を受けて、外部形態も変化・変容する箱を想定した。箱の一部がめくれ、傾き、スライドすることで、開口部、塀、庇、デッキへと変化していく。結果、それぞれの性格は曖昧なものとなり、変化が継続されることで、大木とともに成長することを期待した。