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第14回くまもとアートポリス推進賞/建築ジャーナル2022.8
▪️所在地/熊本市島崎
▪️主要用途/共同住宅
▪️構造・工法/RC造
▪️規模/地上3階 
▪️面積 敷地面積 1517.24㎡  建築面積 226.78㎡ 延べ床面積 571.46㎡
▪️第14回くまもとアートポリス推進賞
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 明治期に開院した老舗病院の福利更生施設である。新人のナースを主な対象とした寮で、1層5ユニットの3層、計15ユニットの構成で、全て女性専用である。計画は、一つの建物の中に個室を配置するという一般的な寮施設の構成を避け、各個人の私的な生活空間と半公的な共有空間の豊かな関係性の構築をテーマとした。本計画における共有空間の役割は、ユニット内の私的な空間と敷地外(道路)の公的な空間を結ぶ緩衝空間であり、またそこは同じ仕事に就く仲間としての集合体を意識する領域でもある。今回はその共有空間にいくつかのヒエラルキーを与えることで、各ユニットの独立性を確保すると同時に柔らかな集合意識の空間を形成することを試みた。
 ユニット配置は、全体を5つのブロックに分け、ほぼ正方形の敷地にたいして、前面の駐車場を除いた外周部分一杯に建物をプロット、そこで生まれた中庭から各ブロックの1階ユニットに、さらにブロック間に設けた3つの階段によって2階ユニットへ、さらに5つの階段により3階ユニットにアクセスする構成をとった。またそれら複数の階段は、形態の繰り返しを避け、配置・形とも全く違うものとし、この差別化が、それぞれの階段を利用するユニット数を限定することと合わせて、外部でありながらよりプライベートに近い共有空間を獲得することを可能とさせた。各ユニットから公共空間へ移行する間に、徐々にその性質を変える共有空間が存在することが、個人と社会(小さな社会である15ユニットの小集団、さらにその外の外部社会)との関係性をより穏やかで柔らかなものとしている。直接的な社会との関係は個人に何がしかのストレスを与える。仕事でのそれは当然避けられないことであるが、せめて住まいでは柔らかな関係でありたい。(人ごみの中、ダンボールに暮らすホームレスはどこまででもストレスが発生している。)特に他者のと関わりを学び始める新社会人には柔らかな関係を用意してあげたい。