手掛かりから主題へ
設計の手掛かりはいつも違います。建物の用途、土地の歴史や環境、発注者の特性(住宅ならばライフスタイルなど)、その時の社会状況など様々で、設計作業はプロジェクトごとにその探索から始まります。施主のヒアリングや徹底的な関連情報の収集などから一つずつ可能性を探っていく地道な作業。まれに運良くすぐに見つかることもありますが、多くは圧倒的な絶望感に襲われながら時間だけが過ぎて行きます。
ただこの苦行、別になくとも建物はちゃんと建設できてしまいます。施主の満足する機能性を備え、綺麗で見栄えの良い建物はこの苦行なしでも問題なくできてしまう。経済活動として見ればそちらが効率的で優れているように思われます。
しかし建築設計における私たちの役割は、たとえ非効率であってもプロジェクトごとの(手掛かりの先にある)主題を愚直に一つ一つ見つけ出し、それを対象物にしっかりと自分なりの回答として提示することであり、その結果生まれた対象を自分たちが関わった建築と自負しつつ送り出すことと思っています。
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