八代の町屋
第8回くまもとアートポリス推進賞/建築ジャーナル2022.8
▪️所在地/熊本県八代市本町
▪️主要用途/専用住宅(店舗付き)
▪️構造・工法/木造(改装)
▪️規模/地上2階 敷地面積 -㎡ 建築面積 330.1㎡ 延べ床面積 525.8㎡
▪️第8回くまもとアートポリス推進賞
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 八代本町において、明治・昭和期に渡り営まれてきた家具店の再生である。現在では、店鋪部分は賃貸として貸し出されているが、母屋は現在も、高齢(90歳)の施主が代々の家を守り続けている。
改修の依頼は、八代市内に嫁いでおられる施主の長女からのもので、昔ながらのたたずまいに手を入れながら、施主が昔からの捨てられない物々に圧倒されながら暮らしている様を見兼ねてのことであった。
 現状の図おこしで、その時点で4、5回以上の改修増築を重ねているということであった。
計画では、施主と娘の記憶を頼りに、できるだけ初期の形に戻しつつ、現在の暮らしで不自由な部分のみ、新しい要素を付加することとした。
 2階は補修を原則として、建具・壁・床の仕上げを見直している。但、屋根の補修の際、予想以上に小屋裏の梁が立派なものであったため、一部天井を取り、小屋組表しとした。
 1階は、蔵の前にあり、通風、採光のさまたげであった倉庫を撤去し、土間と施主の寝室・居間にあたる板間の環境の改善を計った。その板間のみは、日々の生活の中心となる部分であるため、スペースの拡大が必要となり、唯一形状が大きく変わった部分であるが、土間への採光と、土間から蔵への視線を遮らない様に、R壁を挿入することで、土間と一体となった新しい生活空間をつくりだすことができた。
蔵は当初より、機能的な意味での倉庫としてのみの改修であり、内部は土台・柱・床の補強に徹しているが、外観は、隣接する和風庭園(市の緑地公園)と一体となって、買物客、ビジネスマンの目を楽しませてくれる。